相続の豆知識

 

相続の全体的な流れ

相続について知るには、まず全体の流れを知る必要があります。つまり相続のことを考える前に、ゴールと方法を決めるというわけです。

例えば、あなたが電車で東京駅から新宿駅へ行こうとするとき、最初に何を考えるでしょうか。おそらくネットで「乗換案内」を検索して、目的地までのルートや料金を調べると思います。やみくもに出発するのではなく、出発の前に行き方のおおまかな見当をつけてから出発します。

改札口に到着するころには、目的地へJRで行くのか地下鉄で行くのかを決めていることが多いでしょう。改札口を通過してから、あるいは電車に乗ってしまってから、行き方を考えたり変更したりすると時間やお金が余分にかかってしまいます。

これは、相続の場合も同じです。相続の手続きを終えるというゴールがあり、これにはいくつかの方法があります。途中で分岐点があり、複数のコースの中から選んで目的地へ向かっていく必要があります。

ただ、電車で目的地へ向かう場合と同じように、事前に行き方とコースを調べてから出発すれば、迷うことはありません。目的地まで早く到着できます。そして、複数の行き方がある場合には、目的地までの「速さ」を優先するのか、「簡単さ」を優先するのか、「料金」を優先するのか、方法を考えることができます。

いずれにしても、まず全体の行程を知らないと目的地まで最短ルートでたどり着くことが出来ません。そのため、相続の場合でも、まず全体の流れを知ることがとても大切なのです。

全体の流れを知る大切さを理解した上で、身近な人が亡くなった後に必要な手続きと届出の全体像を見てみましょう。注意して見ていただきたいのは「期限のある手続き」です。相続の手続きのなかには、期限を過ぎてしまうとできなくなってしまうものや、不利益を受けてしまうものがあります。したがって、「期限のある手続き」は特に注意する必要があるのです。

では、期限を意識して相続の代表的な手続きと届出についてタイムスケジュールを確認してみましょう。

 

<直後に行う手続き(14日以内)>

・死亡診断書、死亡検案書の手配(すみやかに)
・死亡届、火葬許可申請書の提出(7日以内)
・年金受給停止の手続(10日以内)
・世帯主変更届の提出(14日以内)
・健康保険の諸手続(国民健康保険の場合、14日以内)

 

<気持ちが落ち着いてきたら行う手続き>

・住民票の写し、印鑑証明書の取得
・戸籍謄本の取得、相続人の調査
・公共料金等の支払方法変更と停止
・固定、携帯電話、インターネット等の支払方法変更と停止
・葬祭費、埋葬料の支給申請
・高額療養費の請求申請

 

<必要に応じて行う相続手続き(3ヶ月目に注意)>

・遺言の有無の確認(捜索と調査)
 →遺言書がある場合には、遺言書の検認と遺言執行者の選任をします
・遺産を引き継ぐ権利がある人(法定相続人)の確認
・遺産の中身、金額の確認(借金がある場合は注意)
・相続放棄、限定承認(3ヶ月以内)
→ここで、遺産を引き継ぐかどうかを決定します。相続財産が少なく、借金の方が大きい場合には、相続の放棄をすることもできます。
・故人(親)の所得税の準確定申告(4ヶ月以内)
・故人(親)の事業を引き継ぐ申請(原則、4ヶ月以内)

 

<遺産をわける>

・遺産を引き継ぐ権利のある人同士で遺産のわけ方を話し合いで決める(遺産分割協議)
・話し合いの決定事項を遺産分割協議書として作成
・遺産分割協議書に基づき、財産の名義変更
→相続に伴って何らかの手続きを要する財産は、預貯金・貸金庫(銀行などの金融機関)、株式・債権(証券会社)、生命保険(保険会社)、自動車・バイク(陸運局)、土地・建物(法務局)、ゴルフ・リゾート会員権(管理会社)があります。当てはまる場合には、手続きを行いましょう。

 

<相続税を申告し、納める(10ヶ月目に注意)>

・相続税の申告と納付(10ヶ月以内)
→相続税の申告書の提出と納付期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。この期限日が土日祝日の場合には、その翌日が期限です。納付期限までに、「現金で」かつ「一括で」納めることになっています。

このように、相続手続きの中には「いつまでに行わなければならない」という期限があるものがあります。身近な人が亡くなって悲しみに包まれるなか、タイムリミットを意識して手続きを進めなければなりません。特に、相続は予期せず突然おとずれる場合が多いです。そのため、事前に対処法、解決法を調べて「何とかなる」とわかるだけでも、いざ相続が発生したときの手続きの負担感は全く違ったものになるでしょう。